高校時代,弓道をやっていた.これまでいろんな競技やスポーツをやってきたけれど,今になってみると弓道が一番自分に合っていたような気がする.段位もあるし,県の大会では準優勝したこともある.あの当時は弦を離せばまっすぐに矢は的に向かって飛んでいった.正直,当時はこんなに簡単な競技はないとすら思っていた.
近頃では体を動かさなくなって久しく,何か手軽にできるスポーツはないかと思っていた矢先,ふと弓道をもう一度はじめてみようかという気になった.市の弓道連盟主催の初心者教室の門を叩き,もうすっかり忘れてしまった弓道の作法を約20年ぶりに学び直したのが今年の春先のことだ.
そこでは目から鱗の連続だった.先生の指導はこれまで言われたこともないものばかり.自分の高校弓道部での三年間は何だったのかというくらい,所作からはじまる弓道の奥深さにあらためて気づかされた.当時の自分は所詮は高校生,「当たればいい」の世界で天狗になっていたようだ.
筋力も落ちているから,当時引いていた弓などは到底引けない.またあの頃は1日100本引くこともあったけれど,今では10本も引けば腕が震えはじめる.けれども,ここにきてようやく本当の「弓道」を学んでいるという実感がある.
この秋~冬は週末も仕事でびっしりで,しばらく弓からも離れていたのだけれど,今日は久しぶりに道場へと足を運ぶことができた.秋晴れの弓道場.でも風は少し冷たく,大きく息を吸い込むと自分の中の澱んだ空気が浄化されていくようだ.頭をからっぽにして,ゆっくりゆっくり弓を引く.
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