
建築の形を決めてゆくプロセスで,プランニングよりも膨大な数のボリューム模型を作り,外側から形を決めてゆくというのが最近主流の作り方のようです.
実際大学でも,学生には図面よりも模型を作らせることに重きが置かれています.建築は常に立体で考えないといけないので,2次元の発想から抜け出ることのできない学生には,スタディ模型を一つでも多く作らせることはある意味意義ある試みとも言えます.
ところが私がかつて勤めていた事務所では,プランも固まっていないのに模型を作っているとよく怒られたものでした.模型は平面図と立面図を描いてから作るものだと.当時の僕は図面よりも造形から入る傾向があったので,自然と模型から入るクセがついていたのですが,やはりプロの世界は違うのだなとその時は思いました.
その影響かどうかはわかりませんが,うちでは今でもプロセスでスタディ模型というものをあまり作りません.計画は徹底的にプランニングに向き合うことで作ってゆきます.2次元のスケッチは描いているそばから頭の中で3次元に変換されてゆきます.それはある意味これまでの鍛錬の賜とも言えるかもしれません.
模型を作るのはプレゼン模型を作る直前にラフを作り,イメージのすりあわせをするのと(その段階で大きくメスが入ることは多々),その後にプレゼン模型を一発勝負で作るというのがウチのやり方です.
その後も徹底的にプランと断面,スケールに向き合うことで全体のプロポーションを詰めてゆきます.プランや断面が美しい建築は必然的に美しい建築になると今では信じていますが,それは若かったあの頃にはわからなかった境地とも言えるかもしれません.
カタチから入る弊害としては,目先の形に引っ張られて,こうしたいと願うあまりプランが不自然な形にゆがんだり,建築家の恣意性のようなものが前面に出てきやすいことなどがあります.今ではそういう要素を可能な限り排除したいと思っているので,よりストイックに図面と向き合う作業に時間を費やすようにしています.
とまあ,ここまで書いてきてなんですが….
今向き合っているプランニングにあたっては,珍しくプロセスを逆転して試行錯誤中.ラフにプランニングしては模型を作り,それを切り刻んではプランに反映し…という具合に.これまで封印してきた手法ですが,複雑な空間をいろんな角度から検証するには,あらためて有効な手法のひとつとも言えるかもしれません.
スタッフが皆図面作業に没頭しているので,現在所長自ら模型と格闘中.僕自身が模型を作るというのももう何年ぶりだろう.仕上がりを気にせず,ラフスケッチのようにザックザックと目の前の模型を切り刻んでいます.
