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仕事もなく,家族も出かけ,久しぶりにひとりまっさらな日曜日.
さてこんな日は何をして過ごすべきか.仕事だけはとりあえず選択肢から外しておこう.
というわけで,子どもがいたらオチオチ出かけられない美術館へとひとり出かけることにした.まずは以前から気になっていた埼玉県立近代美術館で開催中のアフリカのアーティスト,エル・アナツイ展へ.
アフリカの土着性を感じさせながらも,アナツイの作風は驚くほど洗練されている.
大量の缶詰や空き瓶のキャップを途方もなくつなぎ合わせ,一枚のテキスタイルのように紡ぎ上げる作品群にはただただ圧倒された.
ただそれがけして作家ひとりの制作物ではなく,町工場のように人々が黙々と作業を続けた先に到達しているという事実にもまた目から鱗だった.ある意味彼の手法は「民芸」的とも言えるのかもしれない.
たとえば建築へのアプローチにもふたつの道があると思う.フラッシュアイデアから瞬間を切り取る一発芸のようなアプローチと,素朴な素材を使い平凡ながらもコツコツと手数を重ねることによって圧倒的なマッスを形成してゆこうとするアプローチ.
アナツイのそれは明らかに後者によるもので,そして僕はそういうアプローチが嫌いじゃない.たとえば学生や一部の建築家などは,どうしても見栄えのする一発芸的なアプローチを好む傾向にあるように思う(僕もかつてそうだった).
けれど不器用ながらこういうアプローチもあるということ,そしてそれは時にすべてを凌駕するほどの効果を発揮することもあるのだ,ということを今回あらためて実感したような気がした.

次に向かったのは東京オペラシティで開催中の「家の外の都市の中の家」展.
これは思いのほか良かった.
我々は住宅設計と向き合いながらも,いつも「都市」について思いを巡らせている.
わずか30年の周期で新陳代謝を続ける住宅群と,その集積としての都市.
細分化し高騰化する土地と,その反動でローコスト化する住宅(土地>建物).
住宅と住宅のあいだに生まれる,使い途のない意味不明な隙間….
展示はベネチアビエンナーレ国際建築展の帰国展ということもあり,それら日本の住宅や都市を取り巻く特異性についてわかりやすく抽出し提示していた.(キーワードの「ヴォイド・メタボリズム」はまさに東京という都市を象徴した言葉だ)
ただそれらは問題点でもあるのだろうが,抽出の仕方によっては大いに建築の主題となりうることもわかった.実際に巨大模型として展示された「ハウス&アトリエワン」「森山邸」などには,それらに対する重要な回答や提案が含まれているようにも思えた.これからは少し都市と住宅との関係についても見方が変わってきそうだ.
ちなみに,前述のアナツイとの比較で言えば,こちらはあきらかに前者のアプローチ.
切れ味鋭い瞬間芸であろうが,ただそう見せておいて,その中のプロセスには膨大な思考の痕跡があったであろうことが容易に推察できるところが逆に魅力的でもあった.
ふたつの異なる対照的な作品群を目の当たりにし,手法について,また都市や住宅について,いろいろと考えさせられた一日だった.
週明けから延々とスケジュール調整。すでに数ヶ月先までの週末がびっしり。そこは住宅設計を生業とする者の宿命。週末は進行中のプロジェクトの奪い合いとなる。施主との打ち合わせ、検査や引き渡し、そしてオープンハウス…。
またここのところ立て続けに頂いた設計依頼を整理して、設計スケジュールの組み立て。普通に勤めている方なら、数年先まで予定が入るというのは息が詰まることかもしれないけれども、根無し草のような我々のような職種の場合はとってもありがたいことだ。
貧乏ひまなし.スケジュールを埋めていくことに一種の快感を覚える.
またあらたなプランニング始動.
今回はうってかわって広い敷地.ひとつ前にやっていた敷地の10倍はあるかも.スケール感が追いつかない.配置がうまくいかず,迷いが消えない.そしてこうしてブログなど書いている.もちろん現実逃避である.
これまで,もう何十件の住宅をプランニングしてきただろう.結果から言えばプランニングがまとまらなかったことなんて一度もない.そしてどのプランニングでも自分なりに納得のゆく解決をしてきたつもりだ.けれども,そのどの住宅でも最初にはいつも同じことを思う.
ダメ!ムリ!!
ああ,こうして産みの苦しみがはじまる.おそらくどんなヒットメーカーだって,ひとつの曲をつくる時には頭をかきむしっているに違いない.そして心ではこう叫んでいる.
ダメ!ムリ!!
ああ,プレゼンまでにいつもの自信に満ちたプランができているとは到底思えない.
ああ,逃げ出したい!けれども数週間後にはきっとこう思っていることだろう.
オレって天才かも!?
これもいつものパターンである.

建築知識9月号(エクスナレッジ社)に,昨年竣工の築76年の住宅改修 『池上の家』 の改修事例を掲載して頂きました.
建築知識はいわゆる建築専門誌で,一般の人向けというより,建築関係者の座右の書という位置づけでしょうか.ですから「書店で見かけたらお手にとって」頂いても,一般の方にはちんぷんかんぷんだと思います.建築関係者の方は是非お目通しを.
池上の家は,たびたび書いていますが,我々にとっても非常に難易度の高い計画でした.構造家の山田憲明さんをはじめ,多くの専門家のご協力があってようやく着地点を見いだした計画です.それらひとつひとつの事象は地味な解決の積み重ねですが,あきらめずに最後まで積み上げたことでバランスの良い改修計画になったように思います.
それをこういう形で発表できたことは,我々にとってこの上ない喜びです.
また我が事務所でも,設計でわからないことがあればまず開くのが「建築知識」ということもあり,そこに我々の仕事が掲載され,我々の知らぬ誰かの手引きとなることは大変光栄でもあり,気が引き締まる思いでもあります.
建築知識 2011年9月号
最高のデザインを実現する最高の「耐震改修」を提案する方法






