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月曜日は非常勤を務める日芸2年生のスペースデザインⅠ、前期第一課題「Folding Space」の提出でした。
ノースケールではじめた手作業(手遊び)による造形に、最後はスケールと用途、そしてストーリーを与えて、それぞれの造形の延長線上に建築の”種”を見いだしてもらいました。
手のひらサイズの造形が、スケールを与えることでハンモックのようなものから、街のランドマークになりうる巨大建築にまで化け得るという建築の魔法。最後は皆個性的なアウトプットで楽しい講評となりました。学生同士で張ってもらった付箋の数(いいね!)が励みになってくれることを願います。

それにしても今回義務づけたイメージスケッチ、美大生らしくどんな表現を使ってくるかと思いきや、8割方は画像生成AIでした。
これは今回考えさせられたことで、元になっている造形は学生本人のオリジナルなので安易にAIで成果物を作ったわけではなく、彼らはそれをどう見せるか、どう表現するかというツールとしてAIを使っているに過ぎないということ。プロンプトの使い方に創造性が試されているともいえます。
少し前だと、画力のない学生は素朴な絵に色鉛筆みたいな表現で、イラレや3Dを使いこなす学生と表現の格差が開いていましたが、良い意味で皆が同じ土俵に並んだ感があります。
教育とAIの話はこれから向き合わなくてはいけない問題ですが、画力のあるなしにかかわらず、彼らのイメージをよりクリアに表現してくれるという意味では学生にとっては十分なクリエイションツールになっているように感じました。久しぶりの非常勤でちょっと浦島太郎状態です。


26. 05 / 23
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Living Heritage

美術手帖のYouTubeチャンネルで、建築史家の松隈洋さんが解体がはじまってしまった旧香川県立体育館の問題に言及されています。国内における近代建築を残す意義や意味についてもとてもわかりやすく解説されていて、そんな素晴らしい建築を残せなかったことに胸を痛めつつ、松隈さんの熱弁に引き込まれ心を打たれました。
この中でフィンランドの建築政策についても触れて頂いています。フィンランドでは「The Finnish Architectural Policy」というものが1998年に出されました。これは国の教育省やアートカウンシルが発行元となり、フィンランド建築家協会SAFAが編集を行ったものです。
The Finnish Architectural Policy 1998
https://ace-cae.eu/wp-content/uploads/2024/10/FI-report.pdf
松隈さんも感嘆されていましたが、内容が本当に素晴らしく、序文をまず時の首相が書いていること、またその中でパーヴォ・リッポネン首相は、憲法で定められた「良好な環境に関する国民の権利」を実現する機会を作ること、また「国民には自分たちの環境に責任を持つ権利と義務の両方があり、その権利を行使するためにも建築に関する教育や情報の提供を強化する必要がある」ことを強調し、この建築政策がアールト生誕100年祭の年に出されたことに大きな意義と喜びを感じる、と締めくくっています。
良い環境はすべての市民にとって基本的な権利(A good environment is a basic right of every citizen)という考え方にもしびれますが、私は特にフィンランドの「Living Heritage(生きた遺産)」という考え方に共感を覚えます。
フィンランドでは築90年近いパイミオサナトリウムやマイレア邸といったアールトの建築遺産が、単なる観光スポットとしてではなく、今もなお何らかの形で使われ続けているという「動的保存」の考え方があります。それはまさに建築にとって最も理想的で幸せな状態であるともいえます。
そんなアールトの建築群はユネスコ世界遺産への登録に向けて秒読みの段階に入っています。どうか末長く残って欲しい。松隈洋さんの美術手帖の動画リンクは以下より。素晴らしいコンテンツでした。
◼️美術手帖YouTube・なぜモダニズム建築は壊されてしまうのか?
https://youtu.be/qe5RHnm60BI?si=RTQJ9jsgR0j3F-KK
◇
[追記]
こちらは最新版(2022-2035)のフィンランド建築政策リンクです。
◼️The Finnish Architectural Policy 2022-2035
https://julkaisut.valtioneuvosto.fi/server/api/core/bitstreams/6b2cb52e-2623-46b8-9fb1-467108c34d11/content
1998年の声明から一歩進んで、気候変動や建築的持続可能性(Architectural sustainability)、「Design fo All」の推進、デジタル化の推進などが追加されています。また1998年の声明はEUの多くの国での建築政策モデルとなったことにも触れられています。
建築の価値を「技術的、芸術的、文化的な価値を持つ資本」と捉え、「建築の本質は文化・芸術である」ということを国が宣言している点も素晴らしいです。
冊子も堅苦しいものではなく、ポップでどこかの気の利いた都市の観光案内のようです。国民にまったく響かない国交省の無機質な文書も少しは見習って欲しいですね。

このたび2025年竣工の「回廊の家」が、建もの探訪にてオンエアされます。
建もの探訪には去年の2月に越屋根の家をオンエア頂いて以来1年ぶり。累積だと10件目になります(FP・路地の家・KOTI・縁側の家・扇の家・壇の家・通り土間の家・FPR・越屋根の家・回廊の家)
設計事務所に頼みたいという方は、毎週録画して観ているという方も多いようです。この番組のおかげでご縁がつながり、設計をご依頼下さった方もとても多くて、我々にとっても大変ありがたい番組です。
◇
■ 渡辺篤史の建もの探訪「回廊の家」
・5月23日(土)4:25〜|テレビ朝日(関東圏)
https://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/
・5月31日(日)8:30~|BS朝日(全国)
https://www.bs-asahi.co.jp/tatemono/
早朝の時間帯ですので、寝坊に備えてタイマー録画の準備をお願いします!
BS放送版のほうは全国でご視聴頂けると思います。ご興味ある方はぜひご視聴下さい。
回廊の家

先週、ながめの家のお引渡しがありました。設計から引渡しまで約1年半ほどだったでしょうか、我々としては極めて順調なスケジュールです笑。最後にこうやって、建主と工務店とでお互い称え合って仕事が終えられることに幸せを感じます。
建主のKさんからは「家を作っていくプロセスが楽しかった!」とおっしゃって頂き、それが何よりのご褒美のようなお言葉となりました。こちらも楽しかったです!
建主のKさんは今は今は引退していますが、ずっとクリエイティブなお仕事を続けてこられた方です。現在はコラージュ作品などを作って発表しているそうですが、ご自身が若い頃に制作したレコードジャケットに上書きする形で、特別にコラージュ作品を制作くださりプレゼントして下さいました。とっても嬉しいです!家宝にします。

スタッフの佐藤くんにも色違いの作品を下さいました。こちらどうもありがとうございました。
その前のオープンハウスにも多くの方が足を運んで下さいました。うちのOBスタッフでもある吉里くんもスタッフを連れて来てくれました。

また新しいスタッフが入ったとのこと、活躍目覚ましいですね。こちらも刺激をもらっています。
建築家仲間の小山光さんもお忙しい中駆けつけてくれました。お得意の動画をささっと撮ってくださり、こちらもさすがです。リール動画のリンクをシェアさせて頂きますね。
https://www.instagram.com/reel/DYOrdUlxfyJ/?igsh=MWZiZTBlM3dhNXJ2aw==

最後まで細やかに現場に心を砕いてくださった、山崎工務店の石井さんにもこの場をお借りしてお礼申し上げます。弊社担当の佐藤くんもこの現場を通じて、また一段と成長したように思います。
建主のKさん、コンパクトながら隅々までKさんの住まい方にぴったり合わせた住まいです。どうか楽しく暮らして下さい!次にお邪魔する日を楽しみにしています。

20年くらい昔、私が本当に駆け出しだった頃に設計を依頼くださった方にIさんという方がいらっしゃいました。Iさんご夫婦とは、家を建てた後も何かとご縁があり、今でもたまにやりとりのあるのですが、そのIさんの奥様まりこさんの訃報が先週届き、あまりの衝撃に報を眺めながらしばし固まってしまいました。
まりこさんは当時まだ一件くらいしか住宅を設計したことのない私に設計をご依頼くださり、その後もなにかと気にかけて食事の席に呼んで下さるなど、ご主人と共に私の仕事をずっと見守って下さっていた方でした。
顔が広く、国内外の一線のデザイナーさんともつながりのある方で、当時もほかにもっと有名で実績のある建築家を何人もご存じだったはずなのに、なんの実績もなく無名だった私に設計をご依頼くださったことは今でも感謝しています。その住宅はその後建築専門誌にも掲載となり、それがきっかけで大学の非常勤講師にも声がかかるなど、私にとっては出世作となった住宅でした。
そんなまりこさんが、ある時別れ際に私にさりげなくかけてくださった言葉があります。
「関本さんなら大丈夫」
言葉で書くとなんと平易でありふれた言葉でしょうか。これまでそんな言葉は無数の方からかけて頂いたような気もするのですが、私はこの日のことを今でも鮮明に覚えていて、今に至るまで時折思い出すのです。
言葉というのは不思議なもので、誰がその言葉を口にするのか、どんな時に言われたのか、そのことでその言葉はその人の心に一生分の楔を打ち込みます。いわゆる言霊というやつかもしれません。
その時の私はまだまだ駆け出しで、これからのこともまだ見えず不安でいっぱいだった時だったのだろうと思います。そんな時に目利きのまりこさんにかけられたこの一言は、まるで予言のように響き、「私は大丈夫なんだ」と自分に言い聞かせる暗示と呪文にその日からなりました。これまで何度その言葉に救われてきたことでしょう。まりこさんは私にとってそんな方でした。
今日小さなギフトが届きました。送り主はまりこさん。思わずドキッとしました。
中を開けるとメッセージとともに小さなコーヒーの箱が入っていました。ラベルには「mariko」とあります。「まりこブレンド」コーヒー好きだったまりこさんのご家族が送って下さったものでした。メッセージにはいかにもまりこさんがおっしゃいそうな言葉が詰まっていて、おもわず胸がいっぱいになりました。なんとあたたかな贈り物だろう。
これまでのたくさんの思い出と共に頂きます。
まりこさん、出会いとこれまでのすべてに感謝します。ほんとうにありがとうございます。いつの日か、いつの日か、また会いましょうね!


