Finnish Architecture



update: 2000/11/26

僕の好きなフィンランドの建築
〜アアルトからユハ・レイヴィスカまで〜




フィンランドの建築


フィンランドの建築を表現するとすれば、やはり沈黙と光ではないかと思う。その中には暗く厳しい冬にいかに快適に過ごすかという知恵と自然への畏敬の気持ちがつまっている。室内で過ごす時間がとても長いフィンランド人が建築を評価するとき、その「ぬくもり」というところに非常に価値を置くのもうなずける話である。

厳しい季節から人を守るため、開口部などは伝統的にあまり大きくないが、その内部空間が非常に明るく豊かなのにはいつも驚かされる。光は開口部の大きさではなく、絞った陰との対比なのだとあらためて気づかされる。

誤解してはいけないのは、フィンランドの建築は決して魅せるための建築ではない。時としてそれらは刺激に欠けるし、期待してはるばる見に来た人をがっかりさせる事もあるかもしれない。

しかし、全ての空間は人間を引き立たせるための道具であるということをフィンランドの建築は教えてくれているのではないだろうか。


INDEX

Alvar Aalto

Juha Leiviska


Erik Bryggman

その他




ALVAR AALTO
(アルヴァ・アアルト)




フィンランドの近代建築の礎は、巨匠アルヴァ・アアルト一人によって築かれたと言っても過言ではない。北欧の小さな国に生まれた一人の建築家が、世界の建築界に与えた影響を考えたとき、ましてやその国内の建築家達に与えた影響は計りしれないものであった事は想像に難くない。近代建築を追求するかたわら、頑なにフィンランドらしさにこだわった作風は、どこまでも静かで控えめでフィンランドの風土に溶け込み、今も尚若い建築家達に受け継がれている。

→ アアルト建築探訪 も参照ください。

PAIMIO SANATORIUM
(1929−33)

結核患者の療養施設として、空気のきれいな小高い丘の松林の中にあえて建てられた。アアルトの名を一躍世界に知らしめた出世作。

TURK(ヘルシンキより特急で2時間ぐらい)マーケット広場よりバス111番で約1時間半。サナトリウムの前で下車。

ガイドツアー: 4/1〜9/30
火-金 10-15時
土・日 11-15時 (月休)  
20FIM


VUOKSENNISKA CHURCH
(1957−58)

アアルトの作品では最も評価の高い作品のひとつ。非常に彫刻的で感覚的なフォルムはいかにもアアルトらしい。
IMATRA駅(ヘルシンキより特急で2時間半)よりバスで約10分。ヴォクセニスカ教会の前にて下車。

内部は自由に見て回れる。
HELSINKI UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
(1964)

僕も現在留学中の大学。
ヘルシンキ・リンヤ(LINJA)バスステーション、50・51番のりばよりバス194・195・102・103番。約15分。同キャンパス内にある、シレンの学生教会も必見。
KULTTUURI TALO
(1958)

現在は多目的ホールとして市民に開放している。
ヘルシンキ・Linnanmaki遊園地すぐそば。Sturen通り沿い。3・8番トラム、又はバス70Tで最寄りのストップから徒歩。内部は管理人さんに断れば入れます。
AALTO ATELIER
(1955)

現在はアアルト財団の事務所となっている。当時の模型やドローイングも見られる。
ヘルシンキ・ムンキニエミ。4番トラム終点より徒歩8分ぐらい。Tiilimaki通り。 内部は平日13時又は15時ごろが望ましいらしい。40mk。
AKADEMIA BOOKSTORE
(1969)

ヘルシンキ最大の書店。建築書・デザイン書も充実。地下には文房具のコーナーも大幅に拡張された。併設のカフェ・アアルトでコーヒーをのみたい。

エスプラナディ通り。9:00〜21:00(土曜は18:00まで) 日休み。

その他のアアルト建築情報

・アアルト自邸
Riihitie, Helsinki
6/1〜9/15まで
毎日12:00〜16:00 
40mk
・Villa Mairea
Noormarkku (Poriの北、15km)
7/1〜8/31まで
要予約。
tel/fax: 02-625-5460 Anna Hall
・夏の家/Koetalo
Muuratsalo,Jyvaskyla

6/2〜9/30まで
月・水・金 13:00〜14:30
40mk
Homepage: www.alvaraalto.fi
Email: alvar.aalto-museo@jkl.fi




JUHA LEIVISKA
(ユハ・レイヴィスカ)




アアルト・デザインの正統的な流れを汲みつつ、そのモチーフをどこまでも透明にそして純粋に研ぎ澄ました彼の空間に触れるとき、僕は精巧なガラス細工を思い出す。それは彼の人柄そのものでもある。
建築家の理論や理屈ではなく、芸術家のような繊細さと直感で貫かれた空間は我々の心に直接問いかけてくる。彼の建築との出会いは僕の建築に対する考えを大きく変えるものとなった。

MYYRMAKI CHURCH
(1984)

南北方向に伸びた壁の間から差し込む光は訪れる時間によって印象が全く異なる。全体の構成、照明、色彩どれを取っても彼の非凡で繊細な感覚が感じ取れる。僕のヘルシンキで最も好きな建築。

ヘルシンキよりVantaankoski行き電車で約15分。Louhela駅下車、すぐ目の前。
日曜日の朝はミサが行われているが、お昼以降であればOK。日曜日は建築のガイドが説明してくれる。
VALLILA DAY-CARE CENTER & LIBRARY
(1991)

古い木造建築の残るこのエリアに設計された木造の図書館とデイケアセンターのコンプレックス。木構造とは思えないほど複雑で、ダイナミックな構成。そして、おとなしい外観からは想像もつかない程明るい内部空間におどろく。
ヘルシンキ・トラム6・8番。Hermanniの手前で降りて徒歩。Vallian通り。





ERIK BRYGGMAN
(エリック・ブリュッグマン)



フィンランドで最も優れた建築を問われた時、アアルトでもユハでもなく、彼の教会を挙げる人は多い。海外では全く無名に近いが、フィンランドのトゥルク周辺には非常に多くの建築を残している。 アアルトがトゥルクで事務所を構えていたとき協働していたこともあるらしいが、かのアアルトよりも図面が達者だったというエピソードも残っている。傑作と言われる作品は少ないが、生涯一の建築をトゥルクの地に残した。

CHAPEL OF
RESURRECTION

(1941)

おそらくブリュッグマンの最高傑作。フィンランドよりもむしろスウェーデンのアスプルンドなどの建築に雰囲気は近い。研ぎ澄まされた空間感覚、光、そしてディテール。そっけない外観とは全く異なる空間体験。ここを見ないとフィンランドの建築を語ることはできない(?)。

トゥルクよりバスで約10分。トゥルクの南、Uudenmaan大通り沿いトゥルク・セメタリー内。





その他



TEMPPELIAUKIO CHURCH
(1969)
設計:Timo&Tuomo Suomalainen

岩の上に成り立つヘルシンキ市の中心部に位置する、岩をくりぬいて作られた教会。ここの空間は、まさにフィンランドの自然と人間との関係を表している。天井に浮かんだ巨大な銅板の天井が圧巻。

中央駅より徒歩で10分くらい。
KIASMA
(1998)
設計:Steven Holl

設計者は国際コンペで選ばれた米国人であるが、非常にダイナミックで開放的な空間はとても気持ちが良い。カフェも賑わい、今ではヘルシンキの街のランドマークになっている。




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