「アルヴァ・アアルト展」がようやく9月からはじまります。国内数館を巡回予定です。皮切りは、まずは神奈川県立近代美術館・葉山より。

『アルヴァ・アアルト―もうひとつの自然』
会期:2018年9月15日~11月25日
会場:神奈川県立近代美術館・葉山
https://bijutsutecho.com/news/16283/

私はコーディネーター役の和田菜穂子さんらと共に、AALTO120メンバーとして約1年ほど前から、今年のアールト展につなげるための活動を続けて参りました。

昨年10月OZONEでの藤本壮介さん、12月のARTEK+IMA、2月の堀部安嗣さんをお招きしてのアールト関連講演シリーズは、すべてこの展覧会を成功させるためにありました。「最近アールトがアツいよね!」とお感じの方がいらっしゃいましたら、我々の活動も少しは功を奏したかもしれません。

多くのご苦労はほとんど和田さんが担っておられますので、私が言うべきことはありませんが、彼女をサポートしながら思うことは、アルヴァ・アールトという世界的建築家の国内巡回展といえども、実質的に中心となって動かしているのはごく数名の献身的な人たちであり、それらはほぼボランティアに近いものだということです。

しかしそれらの方々の、熱い思いや愛情によって世の中は動いているのだということも今回強く感じていることです。和田さんご苦労様です。最後まで走り抜けましょう!

まだ明らかにできませんが、9月のオープニングセミナーには、意外なあの人にもご登壇頂く予定です。皆さん、あっと驚くと思いますよ。どうかお楽しみに!


昨日のSADIでの総会講演会、齋藤暖生先生による北欧の「万人権」のお話はとっても良かった。まさに我々が北欧に惹かれる根に触れるお話だったと思う。

北欧では国ごとの違いはあるにせよ、自然はみんなのものという意識があり、私有地であっても勝手に分け入って、ベリーやキノコを自由に摘むことができる。そしてそれが法によっても守られている。

日本では土地を買えば、その上にあるものは土地所有者のものだ。それがたとえ風に運ばれてきて咲いた一輪のタンポポであっても。

北欧には土地を持たない人の権利、貧しい人を守る保障がある。スウェーデンでは人口の3%が国土の50%を所有しているという。日本人のような感覚を持てば、国民の97%は自然を享受する権利の過半が奪われることになる。

実は日本も同じ構造の上にある。我々が自由に享受できる自然なんて、ごくわずかにしか存在しないということに気づかなくてはならない。

写真は軽井沢での一コマだ。よく見て欲しい。敷地の境界に沿って植えられた不自然な木の列を。

自然を享受しようと避暑地に足を運びながらも、自ら敷地を囲んで閉ざすというこの構造は、軽井沢にすらもはや自由な自然は存在しないということを意味している。そしてそれは首都圏の住宅地に見る光景そのままだとも思う。


アールトはディテール。
ディテールにこそ、アールト建築のエッセンスは宿っていると思います。

建築の実現の前には必ず技術の壁があり、これを乗り越えてはじめて建築は世に誕生するわけですが、問題解決のために「芸術」と「技術」との交点に存在するもの、それこそがディテールです。

アールトらが設立したartekの社名が示すように、「芸術(Art)と技術(Technology)の融合」は、そのままアールトの建築世界そのものを表現しています。

そんなことで昨年、多くのアールト、北欧建築に関わる著書をお持ちの九州産業大学の小泉隆さんに、SADIでアールトをディテールで切る講演をして欲しいと打診をしましたら、「ちょうど3月にアールトをディテールで切る本を出すんですよ」とのこと。なんと!

小泉さんの著書はすでに発売されています。是非お手に取って頂きたいのですが、アールトのハンドルコレクションを含め、実に丹念にディテール採取をされ、的確な解説を寄せて下さっています。そして思いました。やはりアールトはディテールなんだと。

そんなことで、SADIとして私の肝いりで企画を進めてきました小泉隆さんの、書籍と同名タイトルのSADI講演会が今週金曜日(3月23日)にあります。アールトってよくわからない、という方はまずは視点をディテールに移すことをお勧めします。

(もちろん、ディテールには文字通りの”細部”という意味もありますが、全体構成を司るのもディテールであるということは付け加えておきます)


SADI|小泉隆講演会
「アルヴァ・アールトの建築|エレメント&ディテール」

3月23日(金)19:00~
新宿・工学院大学中層棟8階ファカルティクラブ
※詳細はこちらより
https://sadiinfo.exblog.jp/28077872/

※事前申し込みはいりません。
※満席が予想されますので、お早めのご来場をお勧めします。


昨日のセンター試験の地理Bで、北欧発アニメの舞台を答えさせるという問題が出題されたということで、昨晩はおもに北欧つながりの友人らのSNS等で話題がもちきりだったのですが、今朝になって新聞記事にもなっていて二度びっくり。

「ムーミン どこに住んでいる?」という見出し。
いや設問は舞台を答えさせるということで、住んでいる場所を答えさせる問題ではなかったはずですが。

これは左側に示されたアニメ「ムーミン」と「ビッケ」を、それぞれの舞台となっている国の言語A(ノルウェー語)とB(フィンランド語)とをそれぞれ結ばせるというもの。


Livedoor NEWSより

「ムーミン=フィンランド」というのは常識だから、むしろ右側の言語のどちらがフィンランド語か?という点においてやや難しかったかもしれないと思いましたが、最初にスウェーデン語が示されていることから、地理の基礎知識と洞察力があれば、スウェーデンと隣り合わせのノルウェーはスウェーデン語とよく似ているはず、という点から拾えたとは思います。(むしろサービス問題?)

ただフタを開けてみると、「ムーミンってノルウェーじゃないの?」という点で間違えた学生も多かったようで(そこ?)、ムーミン公式アカウントが「もっと知ってもらえるようがんばります」との異例の声明を出すというそんなオチがついた。


昨晩駆け巡った北欧在住者の意見(みんなスルドイ)でナルホドと思ったのは、

・スウェーデン語もフィンランドの公用語のひとつ
・ムーミン作者のトーベ・ヤンソンさんはむしろスウェーデン語系

とたんにカオスになりました笑
ちょっと無理ありましたかね。でも設問は、アニメの舞台はどこか?ということなので問題はないのでは?

・そもそもムーミンの舞台は、フィンランドじゃなくてムーミン谷

あらら…これはごもっとも!笑
確かにムーミンにはフィンランドには馴染みのない情景がたくさん出てきますものね。じゃあ私からもいいですか?

・ビッケにも触れてあげて


最近面白い本を読みました。小説ではありません。ノンフィクションですが、ドキュメントみたいなものとも違います。日記です。それもノルウェーの大工さんの。

『あるノルウェーの大工の日記』

オーレ・トシュテンセン著
http://amzn.asia/dESwFxE


ノルウェーの大工さんの日記と聞いたら、みなさんはどんなことが書かれていると想像しますか?私は、きっとあごひげ生やした屈強なバイキングみたいなオヤジさんが、強い酒あおりながらフォッフォッフォって。あ、それはサンタクロースか。でもそんなサンタさんみたいな大工さんが、ログハウス建ててご満悦みたいな、そんな日記かな~と勝手ながら想像していました。

それが、そんな先入観を全力でひっくり返す本だということは先にお伝えしておきます。私はまずはそこにカウンターパンチを喰らって、どんどん引き込まれてしまいました。

つまりこれ、日本の大工さん、いや優秀な現場監督の業務日誌だと思って読むと実に興味深いのです。私は去年行ったノルウェーのログハウスが強烈だったので、ついつい「ノルウェー=ちょっと粗野でダイナミック」みたいなイメージを持ってしまうのですが、どうしてどうして、この大工さん相当繊細で優秀な方のようです。

仕事を受注するための精密な積算や他社との駆け引き。建て主にいかに自分をアピールし信頼を勝ち取るかという努力や、工事をスムーズに遂行するための段取り。そして現場に姿を現さない”アカデミック”な建築家との付き合い方やボヤキなど、これそのまま日本の現場に置き換えてもそっくり成立しちゃうってところが最高に面白いんです。

遠く離れたノルウェーの現場事情や大工さんの考えていることが、日本と何ら変わることがないという不思議。ものづくりって万国共通なんだなあとしみじみ思ってしまいました。


この本のもう一つの魅力は、本文に出てくるこの大工さんによるしみじみと”深イイ”言葉の数々です。以下に、私の心にフックした言葉の数々を紹介したいと思います。

「この職業において、良質な仕事と悪質な仕事の差は、わずか1ミリしかない」
「物を不正確に造るより、正確に造る方が簡単だ」
「経験が教える最も役に立つことは、自分には何ができないか、を知ることである」
「腕の良い職人は、常に強い自信と不安とを同時に抱えている」
「測定、計算、それに精度というものは、メタファーとして人生にも当てはめられるかもしれない。必要以上に精度を追い求めるのはどうかと思うが、適当にやっつけた仕事が歪んでいるのはやはり問題だろう」

そうそう、そうだよね、と遠く離れたノルウェーの大工のつぶやきに一つ一つ相づちを打ちながら、自分の進行中の現場のことなどが一方でぐるぐると頭の中でまわるのでした。日本の住宅設計や施工に関わる人にも是非読んでもらいたい一冊です。

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