また新しい計画のエスキースがはじまった.
エスキースというのは,エスキース帳にラフ・プランニングを描いてゆくプロセスのこと.一般的に敷地は大きければ大きいほど,自由度は高いが難易度は増す.自由度という変数が多すぎて,選択肢を絞ってゆけないからだ.
無数にある選択肢の中から,それを絞ってゆくのはクライアントの要望だったり,敷地の条件だったり,自分の意志だったりするわけだけれど,プランニングが固まり振り返ってみると,自分が一体何に悩んでいたのかわからなくなるくらい明確な線がそこには引かれている.そう,疑いの余地もないくらいに.けれどもその道はけして平坦ではないのだ.
大学では学生達も苦労している.プランニングがまとまらなくて,すがりつくような目で皆指導の席へとやってくる.不思議なもので,プランニングの当事者から離れて指導側にまわると,本人には見えていないいろんなことが実によく見えるのだ.
この学生のゴールはもうすぐそこに迫っている.目の前に見えている扉の位置をさりげなく指し示してあげているというのに,見つからないと言っては元来た道をまた引き返してしまう.あぁ,なんと歯がゆいことか!
でもひとたび自分の問題になると,いとも簡単にその道筋を見失ってしまう.
プランニングの迷宮入りは毎度のことだ.そこにはプロも学生もない.集中して入り込んでは,しばし鉛筆を置き俯瞰的に眺めてみる.気分転換をしてはまた戻ってくる.はまりそうではまらない.僕の後ろの”誰か”もそんな僕の心許ないエスキースを眺めては,きっと歯がゆく思っているに違いない.「あっちがう.そうそこ!」
それを受信できるアンテナは,やっぱり鉛筆しかないんだろうな.
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