Finland通信
2001/01/27 Vol. 37
" フィンランドの冬は寒い!? "
「フィンランドの冬はさぞ寒いのでしょうね。」 こちらに来て日本からよく同様のメールやカードを頂く。1月に入って日本も本格的な冬に突入してきたらしく、例年になく雪などもよく降っているらしい。フィンランドの遥か南に位置する日本ですらそんな状況である。ましてや北極圏に手が届かんばかりのフィンランドの寒さときたら...日本の友人からはさぞ同情されていることと思う。 僕は寒さは苦手である。従って冬は嫌いである。僕にはトラウマがある。大学の頃は体育会スキー部に入っていたのだが、当然泊まるのは安い民宿である。朝寒さで目が覚める。室内なのに息が白い。大会のジャッジで吹雪のコースに長時間立たされる。薄れていく感覚、凍死するかと思った...。 フィンランドは憧れの国だった。でも出国前に僕を唯一憂鬱にさせていたのが、半端無いであろう冬の寒さである。果たして耐えられるだろうか? 結論を先に言おう。フィンランドの、少なくともヘルシンキの冬は暖かい。 もちろん今年は歴史に残るくらいの暖冬らしいが、それでも時折寒波もやってくる。−10度を下回る日もあったし、それ以外の日でも最高気温は常に氷点下である。しかし、それでもフィンランドの冬は特別寒いとは僕には思えない。むしろ非常に快適なのである。 自分なりにその理由を考えてみた。フィンランドは湿度が低く、数字ほどは体感気温が低くないという事もあるだろう。しかしやはり大きいのは以前にも少し触れたけれど、フィンランドは家や建物の中が暖かいという事である。そう言うと、日本だって建物の中は暖かいじゃないか、と言われるかもしれない。しかしそうではないのだ。暖かさの「質」みたいなものが違うのである。良く言われるように日本の暖房の主流はエアコンである。暖気を吹き出して循環させる。だから暖気はとうぜん天井に溜まりやすく、「頭熱足寒」状態になってしまう。つまりのぼせている割には足元が寒い、というやつである。 こちらの暖房はパネル式、正確には「輻射熱型暖房」というのだが、室内の「面」を暖めることによって間接的に暖房を行う(日本でもおなじみの床暖房も輻射熱暖房の一種)。だから空気も循環しにくいし、足下から頭まで均一に暖房効果を感じることができる。しかし、それには建物の高性能の断熱が前提となってくる。北欧はどこでも断熱方法について法律で厳しく規定しているので、そういった微妙な暖房方式でも成立するわけだ。 話を戻そう。とにかく僕が出した結論はこうである。 「冬が嫌いな人の家は、例外なく寒い」 思い起こして欲しい。冬、朝起きるとき、家に帰ってきた時、夜机に向かっている時、しみじみと冬は嫌だと感じるのではないか。外に出るときは厚着をして出掛けるし、一部を除いて外を長時間歩かなくてはならない状況はそう多くはない。 帰ってきて家の扉を開けた瞬間に感じるこちらのこのぬくもり加減はこの上なく心地が良い。それこそ心からリラックスができるというものだ。 少なくとも、僕は今まで生きてきた中でこんなに「暖かい」冬を経験したのは初めてである。 (ちなみにウチはヒーターの故障でこの冬一度も暖房をしていない。でも寒いと感じた事はあまりない。つくづくこっちの断熱ってスゴイと思う。) |
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