今回のフィンランド渡航の目的は、ヘルシンキのアールト展を見に行くことと併せ、かつて巡ったアールト建築をもう一度尋ねて、あらためて写真(アーカイブ)を残したいということがあった。

留学時代は使っていたデジカメも貧弱で、高画質なデジカメは高価で手が出せなかった。画像のサイズはわずか640ピクセル。そのため、レクチャーなどにも良い写真が使えず、また出版社から素材提供を求められても提供することができなかった。

そのかわり、当時一眼レフではよく写真を撮っていた。しかもポジフィルムで。ポジで撮るというのは、当時ヘルシンキで親交のあった写真家の根津修平君の影響だったように思う。

ポジフィルムはネガと違って通常プリントをしたりしないので、現像したフィルムはろくに確認もせずにスリーブのまま保管していた。確認しようにも、当時はライトボックスすら持っていなかったのだ。

そのため滞在中いろいろ撮った記憶はあっても何を撮ったかは覚えておらず、撮ったとしても大した量ではないと思っていた。データ化されていないので全体像も把握できず、そのまま引き出しの奥に仕舞われたままだった。なんともお粗末な話だ。

それを今回の旅行後にふと思い出し、ゴソゴソと引き出してみるとすごいお宝写真が詰まっていたことに気づきびっくりした。その数実に800枚近く!そんなに撮っていたんだ。


しかも現在では内部撮影が禁止されてしまったマイレア邸の内部写真や、中にはマイレア邸の屋根の上に上がって撮ったものも。今では絶対に許されないカットである。確かこの時は取材のコーディネーターを務めていて、特別に許可されたときの一枚だったと思う。

そして、ロシア領にありまだ改修半ばで廃墟化していたヴィープリ図書館の写真も出てきた。これも当時決死の覚悟で国境を渡り訪れたものだ。今は改修も終わりきれいになったようだが、当時の荒廃したヴィープリ図書館の面影を伝える貴重な資料だ。



そしてパイミオサナトリウム。今では結核療養所としての機能は終え、児童福祉財団のリハビリ病院になっているそうなので、この現役の医師たちが食堂を利用しているこの光景はもう二度と見ることはできない。

パイミオは当時付属の寄宿舎に泊まって模型の修復作業をしたのも良い思い出だ。


ほかにも行ったことすら忘れていた地方のアールト建築や、レイヴィスカなど他の建築家による地方の建築、そして若かりし時代の我々のポートレートなど。これだけの資料画像があれば、今後当面は困らないと思う。

早速これらはデータ化して、活用できるようにしたい。

これまでその存在に気づかなかった自分にもびっくりだけれど、逆に中途半端なデジカメで残しているよりも、はるかに再現性の高いスライドフィルムで記録を残していた当時の自分を褒めてあげたいと思う。

17. 07 / 30

北斎美術館



近くまで行ったので、遅ればせながら北斎美術館に足を延ばしました。

すみだ北斎美術館 http://hokusai-museum.jp/
設計者は世界的建築家である妹島和世さん。

建物についてはまわりの建築家から賛否両論、いろんな意見を聞いていたので自分の目でも確かめたく。ふむふむ、それぞれがどういう意味でおっしゃっていたのか理解しました。私ですか?

これ、北斎じゃなくてよくね?


大学の後輩でもある建築家の阿蘓俊博(アソトシヒロ)さんよりオープンハウスのお誘いを頂きました。「朝霞の家」ということですぐご近所です。ということで、自転車を漕いで颯爽と行って参りました!

アソトシヒロデザインオフィス www.asotoshihiro.com

実は阿蘇さんには本住宅について、埼玉エリアの工務店についてご相談を頂いておりました。そこで私がお付き合いする何社かの工務店さんをご紹介したのですが、そのうちうちの「VALO」などを施工下さったニートさんに施工をお願いされたようです。


敷地に着いて、裏山の茂みに見覚えが…。そういえばずいぶん昔に、この辺で土地探しをされていたお施主さんより、このすぐ隣くらいの敷地についてご相談を受けたことがあったのでした。

それは結局建ちませんでしたが、建っていたら阿蘇さんのこの家と相まって、ちょっとした面白い住宅地になっていたかもしれませんね。

外壁は吹付け仕上げにされていて、独特のグレー色が際立っていました。こういう色のチョイスが建築家のセンスを物語っていますね。




内部は徹底したアーチ型窓の連続で構成されています。アーチ形状については、当初の建て主と交わされた会話のキーワードに「雪のかまくら」のような家という言葉があったことを挙げていましたが、それが設計プロセスと共に昇華され、古典建築のようになっていったストーリーはとても興味深かったです。

プランは敷地に対して若干角度を振ってあり、全体の平面形状は平行四辺形になっています。直角をなくしただけで空間の予定調和が破られて、不思議なスケール感と奥行きが獲得されていることがわかります。


個人的にとても気に入ったのは、2階のこのスタディーカウンター。かわいいですね!

床材や天板の仕上げのチョイスと相まって、なんだかイタリアかどこかの図書館のようだなと思いました。それぞれが座る位置にアーチ窓が用意されています。ここにお住まいになる家族が楽しく暮らされる様子が、目に浮かぶようでした。


実は、当日お施主さんもいらっしゃったのですが、私のブログが好きでよく読んでくださっているとのこと。どうもありがとうございます!実は他の設計者のお施主さんからも、私のブログを読んでいると言われることがちょくちょくあるのですが、ありがたい反面、同業者の手前複雑な心境になることも。

(お役に立てて光栄ですが、実はわたくし住宅の設計もやっております)

ともあれ、今回阿蘇さんの住宅を見せて頂くのははじめてでしたが、大胆な構成の一方で緻密にディテールを解いており、誠実な設計スタンスを感じました。さすが、実力者ですね。ご丁寧にご対応をありがとうございました。今度またゆっくり!


事務所のOBスタッフで、akimichi designを主宰する柴秋路くんの住宅「にびいろの舎」のプレ内覧会に、事務所スタッフを連れてお邪魔してきました。

柴くんは過去、百日紅の家やかたつむりハウスなどを担当してくれたスタッフで、OBスタッフの中でも古参スタッフのひとりです。これまでなかなか都合が付かず、新築の仕事をじっくり拝見させてもらったのは、この日が初めてでした。


とにかく細部に至るまで破綻なく丁寧に納められており、また柴くんらしい建築観も芯にあって、それがとても新鮮な印象を持つ住宅でした。光の採り入れ方もきれいでしたね。

リオタデザインのOBスタッフは皆図面巧者で、細部に至るまで繊細な仕事が見て取れるのが、私のささやかな誇りになっています。



我々はディテールという言葉をよく口にしますが、それはなにも取るに足らないものへこだわりや、オタクっぽい作り込みのことを指すのではありません。

むしろその逆で、骨格のあり方や成り立ちを整理し、線をとことんまで少なくしてゆく作業こそが我々の目指すディテールの思想なのです。


柴くんの仕事にも、そんな”ディテールの流儀”を感じることができ、その真摯な仕事の向き合い方にも清々しさを覚えました。

また良くも悪くもまだ確立されていない手法の端々に、迷いとも試みとも取れる作法も読み取りましたが、やがて洗練へと向かう過程で、それがどのように化けてゆくのか今後が楽しみです。

柴くん、今日はご案内ありがとうございました!



構造設計をいつもお願いしている構造家の山田憲明さんの著書(多田脩二さんとの共著)が昨年末に発売されました。山田さんよりわざわざお送り頂き、早速手にとって読んでいます。

構造の本と聞くと、学生時代構造力学の授業が大の苦手だった私などは一生開かないようなタイトルなのですが、この本は正直私のような意匠設計者にこそ役に立つような、非常にわかりやすい切り口の構造指南書になっています。いやむしろ構造ディテールというより、もはや建築デザインのディテール集と呼べるものかもしれません。

言うまでもなく木造は日本のお家芸でもあり、古い歴史と伝統があります。ただこれだけ一般的で市民権を得ているにもかかわらず、ある意味先人の知恵や経験値に頼る部分も大きく、それに加えてプレカットのオペレーションや、行政主導による一方通行の仕様規定などによって思考停止に陥っている側面も否定できないと思います。

当の私も山田さんと協働するまではそうでした。

図面上は可能でも、これで持ちますか?(構造上安全ですか?)という質問は現場の大工さんにぶつけてみて、厳しいという返事が返ってくればできないということがよくあります。ところが現場の大工さんはその判断の多くを経験に頼っているため、やったことがないことは「できない」と答えることが多いのです。これでは木造が未来に向けて進歩してゆかないことを意味します。

そのために構造設計者がいるわけですが、実は木造の正確な解析ができる構造設計者は国内では数が少ないのが実情です。鉄骨やコンクリートと違って、無垢の木は工業製品ではないので性能がまちまちで、同じ材でも産地や含水率などが違っただけで強度にばらつきが出てしまうからです。継ぎ手をどうするかによっても変わります。

正確に計量できないということは”変数”ですから、「変数x変数」で結局答えが出せないというのが、木構造の設計を難しくしている要因であるような気がします。

山田さんの木構造がユニークなのは、そんな木造のやっかいさを理解した上で、常識に囚われず柔軟にディテールを組み立ててゆくところにあります。

特徴的なのは木造を木だけで構成することにこだわらず、スチール材や汎用構造金物、時にスクリュービスですらも仕口や構造の補強材として躊躇わずに使うということです。複雑な木造をシンプルな体系に置き換えて、鉄骨造やRC造と同列であるかのように扱う。実際、山田さんはRC造をやらせても実に上手いんですよね。



建築を自由に発想するための手段として、こうした柔軟な手法は今後新しい木造を考える上では大きなヒントになるような気がします。

この本にはそんな解決の数々が収録されていて、正直協働設計者としてはあまりみんなに知られたくないなぁというか、山田さんと協働した者しか知り得なかった”秘伝”のようなディテールもあり、気を揉むところもなくもありませんが、、。ちなみに、我々と協働した案件の構造ディテールについても紹介されています。

そんなこの本ですが、売れすぎてあっというまに出版社にも在庫が切れてしまったようで、現在増版中とのこと。アマゾンでは早くもプレミアが付いて中古本が5000円以上つけていました汗。建築関係者の方は、落ち着いた頃にまた手にとって頂けたらと思います。

構造ディテール図集/山田憲明(木造)、多田脩二(鉄骨造)|オーム社
http://shop.ohmsha.co.jp/shopdetail/000000004798/

私が頂いた山田さんのサイン本はもちろんプライスレスです!笑

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