留学中から使っていたアラビアのTEEMAの皿を、2枚あるうちの1枚を割ってしまった。TEEMAの皿は今も買えるけれど、現行品はIittalaのラベルになっていて個人的には興醒め。やっぱり陶器は(ブランド統合前の)アラビアのものに限る。
スタンプだけでなく、割ってしまったTEEMAは直径19.5cmのもので、このサイズも現行品にはないものだ。どうでも良いことかもしれないけれど、20年以上毎朝同じ皿を使っていると、少しだけサイズが違うというのはどうしても違和感になってしまう。朝のルーティンは重要なのだ。
そこから当時のTEEMA皿を探す旅が始まった。この19.5cmのアラビアのTEEMA皿というのはレアもののようでなかなか見つからない。このなかなかないというのも宝探しのようで楽しい。メルカリなどで見つけてはコツコツ買い足し、今では4枚にまで増えた。
しかし値段こそ言わないが、今では結構な値で取引されていることにびっくりする。当時はアラビア工場で数百円で売っていた皿だ。古いもの持ち続けていると、価値は上がる一方だというのをつくづく実感する。
金曜日は彦根アンドレアさん企画による、アアルト財団のJonas Malmbergさんによるパイミオサナトリウムのレクチャーに参加させて頂きました。
数あるアアルトの作品のうち、パイミオはマイレア邸と並んで私が最も好きな作品のひとつ。若きアールトのエッセンスが凝縮され、アアルトらしさやオリジナリティが高いと感じるからです。
パイミオサナトリウムが完成して約90年、結核療養所として建てられ、結核が根絶したのちも用途を変えながら今も建物は存続しています。アルテックの初期ラインナップの多くはパイミオのために作られ、アルテック創業の原動力にもなりました。2026年に向けて、ユネスコ世界遺産登録への動きもあるそうです。
一方で高額な維持費、不便な立地、建物の老朽化に何度も身売りの危機がありました。オリジナルのデザインを守りながら、時代の変化に追従すべく一貫して改修計画を担ってきたアアルト財団きっての研究者が「果たしてオリジナルとは何か?」と問いかける言葉に深く考えさせられました。
また単なるうわべの建物解説ではなく、そもそも結核とは何か?からはじまるヨーナスさんの話は、噂通り世界一マニアックでめちゃくちゃ面白かったです。見たことない図面や写真が次々出てきて、そのレア度がわかる身としては、まさに鳥肌ものでした。
アンドレアさんの自邸もご案内頂き、またヨーナスさんとはみんな帰った後もアアルト談義が止まらず、二人でアアルトのディテール写真を見ながら世界一マニアックなトークができたのは本当に幸せな時間でした!(終電でした)
アンドレアさん、素晴らしい企画をありがとうございました。またごちそうさまでした!
昨日は所属する日本建築家協会(JIA)住宅部会の納会と、住宅部会賞2023の受賞発表がありました。
この納会をもって、私は昨年度の部会長、そして今年度の副部会長という一連の大役の肩の荷をようやく下ろすことができました。また今年度部会長の久保田さんも大変お疲れさまでした!
住宅部会賞2023では、「巣の家」にて部会賞のうち選考委員の今井均賞を頂くことができました。大変光栄に思います。
賞を頂けたことはもちろん嬉しいのですが、受賞の席で今井均さんより頂いた選評がなにより嬉しいお言葉でした。
「昔から林雅子さんや宮脇檀さんのように、住宅に真摯に向き合ってきた建築家には、その一連の住宅に対して賞を贈るというのがある。この住宅の図面や写真を見れば、関本さんは住宅に真摯に向き合ってコツコツと地道に設計してきたことがわかるし、そういう人でなくてはできない設計。建て主からの厚い信頼も伝わってくる。そういう住宅設計者としての関本さんの一連の仕事を称えて賞をあげたい」
これには本当に涙が出るくらい嬉しかったです。
我々の住宅は、今井さんのおっしゃるように派手さはないし、いつも生活者目線で設計することを心がけているので、大きな賞を取ったり、多くの人を驚かせるような住宅ではないかもしれません。けれども、そんな素朴な一面をこのように拾い上げて頂き、評価を頂けたことは設計者冥利に尽きるの一言です。これまで続けてきて本当に良かった。
大きな賞ではありませんが、大変大きな励みになりました。
今井さん、本当にありがとうございました!またこのような住宅の設計機会を頂きました、建て主のFさんにもこの場を借りてお礼申し上げます。
■ 巣の家
https://www.riotadesign.com/works/22_su/
■ JIA 住宅部会賞2023
https://www.jia-kanto.org/jutaku/news/2780/
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こちらは事務所にかかる過去歴代の住宅部会賞受賞作。
上から「路地の家」「パーゴラテラスの家」「KOTI」、そして今回ここに「巣の家」が加わります。
禅問答に「富士山を三歩前に歩かせてみよ」というのがある。
富士山が歩くわけないじゃないか!と言ったら負け。禅問答はいつだってこんな調子でムチャ振りからはじまるのだ。思えば我々の仕事だっていつもそう。この模範回答のひとつに「自分が前に三歩歩けば良い」というのがある。私はこれがとても好きで、問題に行き詰まったらいつもこれを思い出す。相手が動かないなら、自分が動けばいいのだ。
小泉さんの仕事って、いつも禅問答みたいだなと思う。とんちの得意な一休さん。「この橋渡るべからず」だったら”端”を歩かず”真ん中”を歩けばいい、みたいな。切れ味鋭いとんちで、誰も解決できなかった問題をすっと引いた一本の線で解決してしまう。
解決したらなんとも当たり前の形で、それ以外のデザインなんてありえないと思えるくらいなのに、誰もそこには行き着けない。だから今もなお地方にはいろんな問題が山積している。
え、ズルい!そんなことしていいの!?
いいんです!だってルールは常に自分の中にあるものなのだから。もうちょっと柔軟に考えてみたら?小泉さんのデザインにはいつもそう語りかけられているように思えるのだ。
◇
そんな小泉誠さんの本が出た。
『小泉誠のものづくりの方程式|素材x技術=デザイン30 』
エクスナレッジ刊
出ると聞いてすぐに予約!届いてひらくと、本当に面白くてあっという間に読み終わってしまった。これまで全国各地のメーカーや職人さんと協働し、数え切れないほどのデザインや空間を生み出してきた小泉さんの、これまでのライフワークを網羅した一冊だと思う。
網羅したというのは、けしてこれまでの作品がすべて載っているという意味ではなく、小泉流の”禅問答”があらゆる切り口で紹介されているという意味において。
最初の問題提起から、現地に出向き、人と会い、素材と触れる中で発見に至り、最後は円満解決!という良くできた読切り小説を読んでいるようでもあって、一度読んだら最後までページをめくる手が止まらない。長町美和子さんによる文章の力もあるけれど、ここでもまた小泉マジックにかかってしまう。
私が小泉さんのデザイン手法で好きなのは、「人と人との接点でものを考える」ところ。頭でっかちなコンセプトではなく、現地に足を運び、いつも人との対話のなかに答えを見いだそうとする仕事のスタンスはとっても共感を覚える。いつも答えは人と人の間にしか存在しない。それは私も人生で経験的に学んできたことだ。
そして「短所は個性になる!」ということ。ダメなところを直すんじゃなくて、ダメだと思っているところが、実は長所でありいちばんの個性なんだという逆転の発想。
南部鉄器の銑鉄を使ったプロジェクトでは、鉄の持つ重さをいかに軽くするかではなく「重いんだから重いなりに、重くてよかったというものをつくればいいじゃないか」と、「どっしり動かないテープカッター」をつくりだす。思わず涙が出そうになるくらい優しいデザインアプローチだ。
◇
できあがるデザインはシンプルで美しく、さらにこの本で語られているような軽妙なデザインプロセスを読むと、読者は小泉さんはいつも飄々と、そして軽々と仕事を成し遂げている人のように思うかもしれないけれど、私は知っている。小泉さんはそんな簡単な人ではないということを。
この本の元となっているのは、全日空の機内誌『翼の王国』で2007年から2013年にかけて連載されていたものを再編集したものだという。しかも2020年に武蔵野美術大学を退官した際の退官記念書籍として刊行されたものだとも。でもどう考えても時制がおかしい。
すでにある過去の連載記事がベースにあるのであれば、どんなにのんびり編集したって半年で本になるはずだ。追加取材があったとしても1年もあればなんとかなる。
その本が今年、2024年にようやく刊行されたという事実こそが、小泉さんの仕事の真実なんじゃないかと私は睨んでいる。そうは問屋が卸さない!複雑怪奇なコイズミワールド。
だがしかし、刊行された本はどこまでも美しく、読みやすく、ところどころでクスッと笑えて、勇気をもらって、よしガンバルゾ~!ってなれる。途中に何があったかなんて関係ない。終わりよければ全てよし。これぞまさしくコイズミワールド!
こんな本、なかなかない。いやない!やっぱりすごいな小泉さんは。これからも元気をもらうために何度も読み返します。小泉さん、ご出版おめでとうございます!!
国立のこいずみ道具店にて(2023.7)
先だっては、照明プランナーの吉澤麻由香さんが所内でプチ照明セミナーを開催して下さいました。
我々の設計では、照明計画は実施設計の一番最後のフェーズで、これまでの設計内容を伏線回収するようにプロットしていきます。照明計画では、ただふわっと明るいという空間を作るというよりは、部屋全体の明るさ(アンビエント照明といいます)と、本を読む、料理をするといった目的を叶えるための灯り(タスク照明といいます)とを分けて考えます。更にそこに加えるとすれば、空間全体のムードを高めるための演出ですね。
この環境光/演出光/目的光の使い方について、とてもわかりやすく解説して下さいました。私はいつもこの照明計画を感覚的にやってしまうのですが、これからはもう少し科学的なアプローチで、JIS照度(lx)なども意識して計画をしていきたいと思っています。
まだ私は感覚的ながらも、経験があるので住宅についてはなんとなく配光の勘所がわかるのですが、若いスタッフはやっぱり基本から教えてあげないとこの難しい計画の要点はなかなか掴みきれません。
また照明カタログの見方などもこの日はスタッフ共々勉強させて頂きました。吉澤さん、ありがとうございました!また具体的な案件でご一緒しましょう。
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